小糸公民館で公開講演会を開催しました。

公開講演会

3月18日 小糸公民館講義室

小糸公民館との共催で、講演会を対面とオンラインのハイブリッドで開催しました。

「私たちの暮らしの今のこれからを考えよう」
〜コロナ後に向けた君津市財政を手がかりに〜

講師:大塚成男先生

自治体財政の基本について解説してもらったあと歳入の推移について着目しました。

大塚先生の講義から

令和2年度、3年度の歳入は多くなっていますが、内訳をみると税収は横ばいあるいはやや減少傾向であるのに対して、国県支出金(特例定額給付金や補助金等)が増加しており、決して余裕ができたわけではないことがわかりました。

国や県支出金による歳入拡大の意味として、事業経費の全てが補助金で賄えるわけではなく、補助金は、収入ではあるが追加的な支出(補助裏)を生じさせ、歳入に占める国県支出金の比重が高まっていることが、君津市の財政上の負担を大きくしている可能性があると解説していただきました。

君津市における歳出の推移をみると、平成28年度以降、税収は増えていないのに、支出(人件費、扶助費、物件費、普通建設事業費)は大きく増加しているということがかわかり、君津市における経費の増加は今後も続くと思われます。

財政の余力度をみる尺度として、経常収支比率があり、比率が大きいと財政的な余裕がないといえます。

平成17年頃は2割ほど余裕がありましたが、その後、一気に経常収支比率が上がっていき、平成24年度は98.2%となりました。その後少しずつ減らしていき、89.9%まで下がり全国平均までとなりましたが、全国平均自体が数値が高い状態となっています。「君津市の15年前のイメージで財政を捉えてはならない」というのが印象的な言葉でした。

君津市は財政力指数が高く、不交付団体なのだから、財政的な力がある!?

財政力指数が1を超える団体は全国でも60〜70団体ほどしかないそうです。実は財政力指数は実際の支出額に基づくものではなく、財政力指数が1を超える自治体には自前の収入だけでやり繰りをすることが求められています。

成田市、浦安のように1.4ほどだと余力がありますが、1ギリギリの自治体は、不交付団体だからこそ財政のことをしっかり考えるべきです。

地方財政審議会(令和2年12月)「今後目指すべき地方財政の姿と令和3年度の地方財政への対応等についての意見」では、人口減少・少子高齢化が加速する中で、新型コロナウイルス感染症に着実に対応するためには、確固とした地方財政の基盤が不可欠である。新型コロナウイルスの影響により地方税等の大幅な減収が見込まれており、臨時財政対策債の発行額の増加が避けられない見込みとなっています。

コロナ禍対策が財政に与えた影響として、

①国や県からの補助金の増加による歳入増

補助金には自団体の財源も投入しなければならず、補助金の歳入増は財政を圧迫する危険性がある。

②臨時財政対策債や減収補てん債の起債

これらは地方交付税の前借りと考える必要がある。将来的に地方交付税が減額されている可能性があり、交付税措置があったとしても将来の財政が圧迫される可能性がある。

③固定的な経費の増大

コロナ禍対策の事業経費が、固定的な経費となり、将来の財政を圧迫する危険性がある。

コロナ禍での国の財政投入によって、地方自治体における財政調整基金の大幅な減少は回避されましたが、国の借金の大幅な増加は、将来に影響を及ぼす可能性が大きいです。増えた金は実は東日本大震災に匹敵するほどで、当時は消費税を増額して対応しました。今後、国もコロナの支出を絞っていくことが予想されます。

君津市の地方債残高をみると、減少傾向にあった地方債が、令和元年度以降、大幅に増加しています。これは、衛生センターの建設や学校施設の整備のため地方債で調達したことの影響もあります。今後、将来に向けた負担が増加していることは否定できません。

君津市の令和5年度予算をみると、歳入予算について、税収の減収が見込まれています(2億弱)。国からの補助金は1割減少(5億4790万)。県からの補助金は4億3000万増加ですが、全体としては減っていきます。

地方債の発行による収入は9億減額。気になるのが過去からの蓄えの取り崩しとして、繰入金が20億円(前年より6割増えている、7億6386万円増額、1年で4割蓄えが減るということ)だということです。他の自治体も繰入金による蓄えの取り崩しの傾向があります。

歳出予算をみると、人件費は前年から3000万弱減額しましたが、平成30年度と比較すると13億8666万円増額しています。扶助費は30年度との比較で13億4500万円増額。公債費は前年度と比較して1億9444万円(30年度と同額)となっています。

まとめると、人件費は高止まり、扶助費の増加が続き、公債費も増加傾向にあります。

日本の低金利が今後どうなっていくのか、それによる影響もみていく必要があります。

物件費は令和4年度と同水準で、平成30年度と比較すると2割増(11億8351万円)となっており、補助費等は30年度と比較すると10億2377万円増額となっています。

このように、歳出が大きいままであることが、過去からの蓄えを取り崩さなければならないことの要因になっています。

財政非常事態は財政調整基金が枯渇することで出されるもので、同じ金額で取り崩しが進めば2、3年で蓄えがなくなってしまうことが予想されます。

危惧される将来像

コロナ禍対策としての歳出の拡大が、行政活動の規模を必要以上に増大させ、将来の財源不足を拡大している危険性があります。補助金、協力金はコロナ禍が収束すれば減少するかもしれませんが、業務費用の増加は将来の負担となっていきますので、危機感を持つことが大事です。

健全な財政とは

自治体は現在及び将来において、地域住民に対して、適切な行政サービスを継続して提供しなければなりません。将来世代の負担を大きくする要因としては、次のものがあります。

  • 借金(地方債、借入金にも将来の退職金負担なども含まれる)
  • 維持のための負担が大きい大規模な施設の建設(建物を壊すにもお金がかかる)
  • 継続するうえで多額の資金を必要とする独自の行政サービスの提供(財政力指数が高い自治体こそここの部分が大きい)

将来世代の能力を超える負担を残さない財政運営が行われなければなりません。

市民の役割

まずは、君津市の財政に余裕はないということを知ることです。

「あれもこれも」ではなく、「あれかこれか」を考えていかなければなりません。将来に向けた新たな取り組みを行っていくためには、既存の事業の見直しを行い、余力を作り出す必要があります(ビルド&スクラップ:ビルドするためにスクラップ=見直しが必要)。

そして、君津市における事業の取捨選択は“市民の視点”から行われなければなりません。君津市に任せきりにするのではなく、サービスの提供を受ける側として、本当に残すべきものと整理すべきものを判断しないといけません。

市民自身が君津市の財政に関心を持ち、「あれかこれか」についての意見を発信していかなければなりません。